夜の十時を少し過ぎたころ。
空は少しずつ薄暗くなっていた。
犬を連れて、家の近くの小道をゆっくり歩いていた。
ふいに犬が立ち止まり、森の奥をじっと見つめる。
その様子は、いつになく警戒しているようだった。
一匹のキツネが森の中から姿を現した。
口には一羽の黒い小鳥をくわえている。
数羽の黒い鳥がキツネの頭上を旋回しながら、鋭く鳴き続けていた。
仲間を取り戻そうとしているのだろう。
けれど、近づくことはできない。
キツネは私たちに気づき、一瞬だけ動きを止めた。
その拍子に、小鳥が口から地面へ落ちた。
ほんの一瞬。
キツネはすぐに小鳥をくわえ直すと、森の中へ駆け込み、そのまま夜の闇へ消えていった。
鳥たちの鳴き声だけが、
しばらく森の上に響いていた。