小さな川

小さな川

村の外を、小さな川が流れていた。
北から東へ、そして南へ折れながら、ゆっくりと村を回り込むように流れていく。

子どものころの記憶には、いつもこの川があった。

夏の午後、夕立が過ぎると、村の人たちは家の外へ出てくる。
私もサンダルをつっかけて、堤防のほうへ歩いた。
雨に濡れた土や草の匂いが、あたり一面に漂っている。

畑では夕食のための野菜を摘む人がいて、遠くから声を掛け合う人もいる。
そんな何気ない夕暮れが、毎年くり返されていた。

川辺の畑には落花生が植えられていた。
土から引き抜いて砂を払い、そのまま口へ運ぶ。
川に着けば、水をひと口すくって飲む。
それだけで十分だった。

堤防に立つと、葦が風に揺れている。
水の音は、その緑の奥から静かに聞こえてきた。
振り返れば、雨に濡れた瓦屋根の家々。
少し濃くなった屋根の色が、今でも心に残っている。

夏になると、その川は子どもたちの遊び場になった。
水はぬるく、足元には細かな砂が広がる。
見上げれば白い雲がゆっくり流れ、ときおり小さな魚が水面を跳ねた。

「このまま時間が止まればいいのに。」
そんなことを思った夏があった。

春節が終わるころになると、村は少しずつ静けさを取り戻す。

私は一人で堤防を歩くのが好きだった。

川原はまだ枯草ばかりだったけれど、よく見ると、小さな緑が少しずつ顔を出している。
遠くの村には、まだ赤い春聯が残っている。
その赤だけが、春の訪れを静かに知らせていた。

男の子は少しずつ大人のまねを覚え、
女の子は少しずつ心の中に小さな秘密を持つようになる。

子どものころに笑い合っていたことも、
いつの間にか、それぞれ違う人生へ流れていった。

やがて家族を持ち、
それぞれの暮らしが始まる。

心のどこかにあった物語も、
少しずつ時の中へ溶け、
静かに埃をかぶっていく。

村の外では、
今日も小さな川は、
あのころと変わらず、
流れ続けている。